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最終更新日:2006年10月12日
     神社・仏閣の修復を手がけている宮大工さん 

            三清建築(清内路村)  

訪問日 平成18年9月13日(水)

訪問先 三清建築 (長野県下伊那郡清内路村)

           代表 櫻井 三也 氏

訪問者 下伊那地方事務所長 田山 重晴

            地域福祉チームリーダー 櫻井 勝司

      土地利用・建築室長  杉浦 公雄 

      地域政策チーム主任  小島 伸一  

                                         櫻井 三也 氏

 

田山:三清建築さんは神社仏閣の改修や屋根の修理などの物件を数多く手がけていらっしゃるとお聞きしました。櫻井さんはまだお若いですね。お弟子さんは何人位いらっしゃるのでしょうか。

櫻井:若いといっても、もう52歳になります。うちの従業員は10人程います。国の事業でやっている「大工育成塾」の関係で修行している者も2名います。

田山:今の若い人に将来なりたい職業はなんですか?と聞いたら、第一位は大工ですね。大工さんは人気がありますね。魅力は何ですかね。お弟子さんはどこの出身の方が多いですか。

 

櫻井:魅力ですか、なんだろうな?  何にも無い所から自分の感覚だけで作って行けるということかな。うちにいる職人は飯田近辺の者が多いですね。今年は清内路の中学からも「将来は大工になりたいと」言って、1日職場体験に地元の中学から一人来ました。 

 

 

 

 

          櫻井氏からお話を伺う

田山:櫻井さんは神社仏閣の改修や屋根の修理などを得意とされていらっしゃるとお聞きしました。宮大工の分野の仕事を得意とされているわけですね。桜井さんが宮大工の仕事をされるようになった経緯を教えてください。また、一般の住宅建築の仕事やらないのですか。

櫻井:始めは普通の大工の棟梁の所に弟子入りしましたが、本当はですね、中学の頃から彫刻する事の方が好きだったものですから、19歳頃の時でしたか、仏師になろうと思い、思い切って勤めている所を辞めてしまいまして、修行をしに京都に行こうとしたわけです。ところが途中で体を悪くしてしまいましてね。京都にいけなかった。それで宮大工というか神社仏閣の仕事を好んでやるようになりました。彫り物が好きですから。宮大工の仕事では昨年は白山社の奥宮(飯田市風越山、山頂)の修築をやりました。仕事は一般の住宅もやりますよ。年4軒位やっていますかね。

田山:白山社(飯田市羽場)は私も行った事があります。門が立派ですね。立派な彫刻がたくさん彫られていました。改修工事は彫り物の仕事もやられたのですか?

櫻井:いや、やっていません。社殿だけです。あれは国の文化財ですから、やたらに手はつけられません。

田山:お寺や神社などは全国的に修復の時期に入っていますね。お寺の修復にはどのような材が適しているんでしょうか。また、修復には大きくて大量の材が必要となってくると思いますが、材は何処からどのようにして仕入れていらっしゃいますか。

.           龍淵寺の彫刻

櫻井:お寺に使用する材は岐阜の方からの原木を買ってきています。買う原木は欅(ケヤキ)が多いです。原木専門の市があってね、定期的に市が立つんですが、そこから仕入れてます。市に出る量は少ないですが良い原木が出てますね。入札してきて札が落ちたら原木貰いに行ってお金を支払うシステムです。取引額はけっこうな金額ですから、木を見る目がないと駄目ですね。通念寺(飯田市 駄科)の鐘楼の修復を行ないました。今度は箕瀬町(飯田市)の柏心寺の修復を、下請けだけど手がけます。築300年くらい経ってますねあれは。市の文化財になっているはずですあの建物は。お寺の改修にはやっぱり欅が一番いいですね。第一に硬くて丈夫ですし、木目がたいへん綺麗ですから。硬いから彫刻するには一番いいですね。檜(ヒノキ)は彫刻には不向きです。割れが入りますから。

田山:欅は硬いからですか。お寺の硬い廊下を歩くと身の引き締まる思いがするという方もいらっしゃいますね。

 

 

 

 

 

櫻井:欅もいいですが、床板には桐材が一番いいですね。何しろ肌触りがいいですから。湿気も吸ってくれますし、歩いていて、とても気持ちいいですね。

田山:古材を使用した再生住宅の建築をやられていますか。家のどこかに古材を入れるというか、使用すると住宅がピシッと引き締まりますね。不思議なものですね。 今はそのようにして古材を使用した住宅再生が流行っていますが、逆にですね、古材

          刻みを行なっている作業所

 を正しく扱う事が出来るしっかりした技術を持っている職人さんが少なくなりましたね。話は少し変わりますが今の建築基準法が、古来からの伝統的な日本の大工技術を駄目にしたという方もいます。例えば木組みですね。あの複雑な木組みが出来る大工さんが少なくなってしまっていると聞きました。そこらはどうお考えでしょうか。

櫻井:あるって言えばあるかも知れない(笑)。今は、何でもかんでも金具に頼り切っちゃてますね。昔の仕口(しくち=昔の木組の技術)でやってるほうが本当は丈夫な家が出来るんですが。金具はイザという時に力の逃げ場がないんです。最近の若い子は墨付けが出来ない子が増えてますね。古来からの技の伝承いう点では技術は確実に落ちています。うちでは手で墨出しをさせて、手で刻むようにしています。今はプレカット加工ていう機械刻みが主体ですから、大工が刻みを出来なくても家は建ちますね。


田山:大工の技術というのは何年くらい修行すると取得できるものなんですか。

櫻井:3年から4年。まあ一人前になるには5年はかかるね。本人のやる気にも関係あるし、持って生まれた才能もある。いくら教えても出来ない子はできないし、どうしても覚えられないですね。

田山:修行が終わると、技術を教えて貰って一人前に育ててもらったお礼に、何年か親方の元で働くという師弟制度がありましたね。お礼奉公がありましたね。

櫻井: 今は無いけど昔はありましたね。何年かはお礼奉公しなければならなかった。

 

田山:飯田には神社仏閣が多いですからこれからたくさん修復の仕事が出てきますね。

櫻井:神社はなかなか駄目ですね。なかなかお金が集まらない。その点では仏閣は割愛とすぐ出来る。お寺は檀家がありますからね。今度、南信濃(飯田市)の龍淵寺というお寺の三重の塔を建てる予定でいます。今うちで模型を作っていまして、十分の一の模型が作りかけですが2階にあります。欅で作ろうと思っています。欅は強くて丈夫ですから。南信には塔が少ないですが、飯田下伊那では最大の塔になるかと思います。

                                           建設予定の三重の塔(模型)

田山:塔の中心の芯の柱は浮いてるそうですね。浮いてるから塔が地震の時にも倒れないそうですね。

櫻井:浮いてますね。2階の模型を見てもらうとよく分かります。全体に余裕を持たせて作っていくんです。遊びが無いと駄目ですね。あまりガチガチに作ると力の逃げる場所がなくて壊れてしまいます。

田山:唐松(カラマツ)は何かに利用できませんか。100年経っても駄目ですかね。

櫻井:唐松はね(笑)。100年経てば使えるかもしれない。うちでは今のところ使う予定は無いけれど(笑)。でもテンカラ(天然唐松)はいいですよ。たまに岐阜の市に行くと出てきますがあれはいいですね。貴重ですね。滅多には出てこない。天井板とか竿(竿天井の竿)とかにいいですね。昔は清内路にはいいテンカラの木が沢山ありましたが。中学校を建てる時に切って売り払ってしまいました。

田山:赤松を建築に利用できるような用途は何かないでしょうかね。

櫻井:太くなれば、例えば茶室なんかにいいですね。茶室は松普請が最高ですね。茶室は松が一番です。廊下板に松はいいです。

田山:まさに浅野匠之守の「松の廊下」ですね。屏風に松の絵が描かれていたのではなく、本当に松で廊下が作られていたと聞きました。あそこ(松の廊下)は格式の高い所で大名などの他は、普通の武士は近寄れなかったらしいですね。

櫻井:松の床板は拭きこむとすごい艶が出ます。本当は松普請が最高なのです。色々と手はかかりますが。このあいだ赤門の屋根の修理に少し参加させてもらったけど、けっこう傷んでました。やはり松も使ってありました。

田山:このあいだの修理に参加していただきましたか。多くの方がボランティアで修繕に参加してしていただきありがとうございました。プロの目からみて赤門の痛み具合はどうですか。

櫻井:傷んでますね。野地板や垂木がけっこう傷んでました、雨漏りのせいですね。あれを見ると昔は板葺きの屋根だったようですね。雨漏りしたのでその上に瓦をのせたのかな。板屋根に瓦を乗せたので母屋(もや)が少し細いね。

田山:そうですか。赤門は昔は板葺きの屋根でしたか。新しい発見だな。他に広葉樹では欅の他にいい材は何がありますか。

                                 ボランティアの皆さんによる屋根の修繕工事

櫻井:タモや楢(ナラ)がいいですね。タモは木目が綺麗でいいですね。家具にも使えるし床板にもなるし、いいですね。

田山:栗はどうですか。使えませんか。

櫻井:栗はね。丈夫でしっかりしてますが使える用途が土台に限られますから、どんなに太くて立派でも1本は1本ですから無駄が出ますね。太くなると板材に使う場合もありますが需要はあまりないですね。

田山:欅も青いのと赤いのがあるとか聞きましたが違いがありますか。

櫻井:それはぜんぜん違います。清内路でも場所によって良いとこと悪いところがあります。やはり土目(つちめ=土壌のこと)が違うんですかね。いいのは埼玉とかあっちの方ですね。いずれにしてもここら辺はあんまり良くない、駄目ですね。

杉浦:赤門の材質は主に何んでしょうか。

櫻井:柱はたぶん桧だと思います。俺もよくは見なかったけれどね。一部は松を使っています。天井裏に登ったら垂木は松でした。

杉浦:ベンガラ塗ってあるけど板目やベンガラはどうですか。

櫻井:ベンカラ塗ってあるけどあれは少しね・・良くないね。20年くらい前に改修したと思うけどあの時一緒に直しておけばよかったですね。建築物としての赤門はいいものだけに大事にしないと。

杉浦:屋根を板葺きにするとしたら大変ですね

櫻井:そう、板葺きに戻すとしたら大変な金がかかります。板葺きは30年位しか持ちませんから保守も大変ですよ。瓦のほうが良いですね。ベンガラは下地が浮いてますから、下地を完全に取ってしまってから塗り直さないと駄目ですね。

田山:貴重なお話をお聞きすることができました。今日はお忙しいところありがとうございました。

 

 <あとがき>                                

 櫻井さんが現在取り組まれている三重の塔の模型を見せていただきました。まだ作りかけながら、「あそこの部分ががこのようになって、ここに彫刻が入って」と、目を輝かせて説明していただきました。古来から伝わる神社・仏閣の荘厳な建築美と、先人たちが作り、守り伝えた見事な彫刻を修復し来世まで残そうと頑張っていらっしゃいます。「自分のやった仕事が形として後世に残っていく!」ちょと羨ましい気もいたします。櫻井さんの今後のご活躍をご期待申し上げます。

                       (文責 地域政策チーム 小島 伸一)

                

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